- ち
- I
ち(1)五十音図タ行第二段の仮名。 硬口蓋破擦音の無声子音と前舌の狭母音とから成る音節。(2)平仮名「ち」は「知」の草体。 片仮名「チ」は「千」の全画。IIち(接尾)指示代名詞に付いて, 方角・場所を示す。III
「いず~」「こ~」
ち【乳】(1)乳汁。 ちち。「~飲み児」「お~の人(=乳母)」「~飲めや君が乳母(オモ)求むらむ/万葉 2925」
(2)乳房(チブサ)。 また, 乳首。「両の~」「いとけなき子の, なほ~を吸ひつつ臥せる/方丈記」
(3)旗・幕・羽織・草鞋(ワラジ)などの縁に, 竿・ひもなどを通すためにつけた小さな輪。 みみ。(4)釣り鐘の表面に多数並んだ小さな疣(イボ)状の突起。→ 梵鐘IVち【個・箇】和語の数詞に付いて, 物を数えるのに用いる。 連濁によって「ぢ」となることもある。「鮑玉五百(イオ)~もがも/万葉 4101」
→ じ(接尾)→ つ(接尾)Vち【千】千(セン)。 また, 他の語と複合して数の多いことを表す。VI「~歳(チトセ)」「~尋(チヒロ)」など。 「百(モモ)に~に人は言ふとも月草のうつろふ心我持ためやも/万葉 3059」
ち【地】(1)天に対して, 地上。 海に対して, 陸上。 おか。 大地。 地面。「~の果て」「足が~につかない」
(2)特定の土地。 場所。 地域。 地方。「安住の~」「曾遊の~」「極寒の~」
(3)位置。 立場。「~の利を占める」
(4)所有する土地。 領土。「~を接する国々」
(5)荷物・掛軸など, 上下の定まっているものの下の方。⇔ 天「天~無用」(6)本の部分の名。 製本で, 本の三方の断ち口のうち下にあたる部分。→ 製本(7)(天地または天地人と)二段階または三段階に分けたときの, 第二位のもの。→ ち〔地〕~から湧(ワ)・く突然現れる。「天から降ったか, ~・いたか」
~に落(オ)・ちる盛んであった権威・名声がすたれる。 おとろえる。「彼の信望も~・ちた」
~に塗(マミ)・れる〔史記(高祖本紀)〕戦いに負けて立ち上がれなくなる。 敗北する。→ 一敗地に塗れる~を易(カ)うれば皆然(シカ)り〔孟子(離婁下)〕人の言動に違いがあるのは立場に違いがあるからで, 立場を変えれば同じになる。~を掃(ハラ)・う〔漢書(魏豹伝賛)〕何も残らないですっかりなくなってしまう。VIIち【徴】中国・日本の音楽理論でいう五音(ゴイン)のうち, 低い方から数えて四番目の音。→ 五音VIIIち【日】⇒ にち(日)※二※IXち【治】よい政治が行われ, 世の中がよくおさまっていること。 また, 政治。「名君の~」「乱を鎮(シズ)め~を致す/太平記 13」
~に居て乱(ラン)を忘れず〔易経(繋辞下)〕平和の世にいても, 戦乱の時に備えて準備を怠らない。Xち【父】〔「ちち」「おぢ」などの「ち」〕男子を敬っていう語。XI「醸(カ)みし大御酒(オオミキ)甘(ウマ)らに聞こしもちをせ我(マロ)が~/古事記(中)」
ち【痴】(1)愚かなこと。 また, その人。(2)〔仏〕〔梵 moha; mūḍha〕貪(トン)・瞋(シン)とともに根本煩悩(ボンノウ)の一。 物事を正しく認識・判断できない心のはたらき。XIIち【知・智】(1)物の道理を知り, 正しい判断を下す能力。 儒教における五常の一。(2)〔哲〕(ア)「知識{(5)}」に同じ。 (イ)知識を獲得するはたらき。(3)〔仏〕〔梵 jñāna〕慧(エ)の一。 真理に従って判断し, 煩悩(ボンノウ)を打ち消す精神のはたらき。 《智》XIIIち【笞】律の五刑の一。 笞(ムチ)で尻をたたく刑。 最も軽い。 回数は一〇回から五〇回まで五段階あった。XIVち【茅】チガヤの異名。 [和名抄]XVち【血】(1)動物の体内を循環して流れる液体。 脊椎動物ではヘモグロビンを含むため赤く見える。 血液。 血潮(チシオ)。「~が出る」「~がにじむ」
(2)人の体内をめぐって, その活力の源となるもの。「~がたぎる」「~の気が多い」「~のめぐり」
(3)親から受け継ぎ, 同じ父祖につながる血族の関係。 血筋。 血統。「~は争えない」
~が通・う人間的な温かい気持ちがある。「~・った政治」
~が騒・ぐ興奮して, 落ち着いていられなくなる。 感情がたかぶる。「若い~・ぐ」
~が繋(ツナ)が・る血縁の関係である。 血縁関係になっている。 血を引く。~が上(ノボ)・るかっとなる。 逆上する。 のぼせる。 上気する。 血があがる。「頭に~・る」
~が引・く恐怖や驚きで顔が青ざめる。 血の気が引く。~で血を洗・う〔旧唐書(源休伝)〕(1)悪事に対処するために, 悪事を以てする。 殺傷に対して殺傷で報復する。「~・う縄張り争い」
(2)血族あるいは同胞どうしが相争う。~と汗(アセ)非常な熱意と努力のたとえ。「~の結晶」「~で築いた地位」
~となり肉となる(1)よく吸収されて栄養となる。(2)知識や技能が完全に身につく。 将来意義ある行動をするための活力源となる。~に飢・える人を殺傷したいような, 荒々しくすさんだ気分になっている。「~・えた狼の群れ」
~に啼(ナ)・く血を吐くほど激しく悲しみ鳴くこと。 ホトトギスなどの痛切な鳴き声にいう。~の出るよう努力・辛苦がひととおりでないさま。 血の滲(ニジ)むよう。「~な努力」
~の滲(ニジ)むよう「血の出るよう」に同じ。~は水よりも濃(コ)い親子・兄弟など血筋を引いたつながりは他人との関係より緊密である, ということ。~も涙もな・い冷たくて人情がない。 冷酷で少しも思いやりがない。「~・い仕打ち」
~湧(ワ)き肉躍(オド)る感情がたかぶり, 全身に活力がみなぎる。 非常に興奮する。「~大活劇」
~を受・ける親・祖先から, その気質や体質を受け継ぐ。 血を引く。~を歃(スス)・る〔「礼記(曲礼下, 疏)」古代中国で盟約の時, いけにえの血をすすったことから〕固く誓う。 心から誓う。~を吐(ハ)く思い非常につらい思い。~を引・く親や祖先の血筋を受け継ぐ。~を見る争いで血が流れる。 争いで死傷者が出る。~を分・ける血縁の関係にある。XVI「~・けた兄弟」
ち【路・道】みち。 地名の下に付くときには, そこへ行く道, その地域内を通じている道の意を表す。XVII「しなだゆふ楽浪(ササナミ)~をすくすくと我が行ませばや/古事記(中)」
ち【鉤・鈎】つりばり。XVIII「其の口を探れば, 果して失せたる~を得/日本書紀(神代下訓)」
ち【霊】霊的な力を持つものを表す語。 複合して用いられる。「いかず~」「かぐつ~」「みず~」「おろ~」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.